クリスマス・コンサート(Concert de Crăciun)
年の瀬が迫ると、みな慌しくなるものである。当地ルーマニアにおいてもそれは日本同様である。キリスト教文化圏の為に、クリスマスという年末年始よりも1週間早い時期に重要な行事がある為に、12月中旬以降は仕事にならないのが実情だ。末端は働いていても上層部はこの時期から前倒しクリスマス休暇でスキー旅行に出掛けるということも珍しくない。つまり通常以上に仕事に支障が生じる機会が増えるのと比例的に怠ける人間が増えるということだ。
そんなある日、市内の目抜き通りのダレス人民大学の前でクリスマス・コンサートのポスターが早足で歩く小生の目にとまった。暖冬のこの冬であるが、先を急いでいた小生の決して長くない両脚は、歩を休める。
シンプルなつくりのポスターには、"Concert de Crăciun"と印刷されている。本稿のタイトルにあるようにクリスマス・コンサートである。出演はYumika NOZAKI(nai)、Monica REPANOVICI(pian)とある。野崎ユミカとは、当地でナイという楽器の演奏を研鑽されている在留邦人である。彼女の演奏は一昨年に同じダレス人民大学のホールで接したことがある。その時は日本へのツアーの壮行コンサートであり、バスーンの四重奏との共演が珍しかった。
前置きが長くなったが、本日当該コンサートを拝聴してきた。
ナイ(nai)という楽器は、日本ではパン・フルートと呼ばれることが多い楽器である。イギリス語ではPanpaipeと綴る。「コンドルが飛んでいく(El cóndor pasa)」でお馴染みの楽器と言えば、音色を共に小膝を叩く読者諸氏もご納得いただけることであろう。この曲は南米アンデス地方の曲と小生は記憶にあるが、同じ楽器が大西洋を隔てた欧州大陸の端っこでもその息吹が息づいている。詳しくは知らないが、単純な構造の楽器なので、伝播したのではなくそれぞれに発生し得るものだったと思われる。ルーマニアには世界的に有名なナイ奏者がいる。ゲオルゲ・ザンフィル(Gheorghe Zamfir)という名前をご存知だろうか?日本でもCD等が販売されているのでご拝聴をお薦めしたい。
このナイは、ルーマニアでは民俗曲の演奏に使われているが、この日のコンサートはクリスマス・コンサートである為にそれに因んだ曲を中心に選曲されていた。共演者の楽器"pian"とはピアノのこと。つまりピアノ伴奏ということである。これらの曲を生演奏で聴くことは意外なもので、小生のこれまでの記憶にはない。野外のイベント等では恐らくあるであろう。日本ではテレビやラジオのコマーシャルメッセージ、もしくは街の店頭から耳に入るものの、ベートーヴェンの交響曲第9番の第4楽章と共に「年の瀬」を意識するに過ぎないものであった。そういうクリスマス・キャロルが、これまた小生の日常から離れたところに位置するナイという楽器で演奏されるのである。大変貴重な機会といえる。そして肝心の演奏も前回の2年前と比較して満足いくものであった。上手である。終演後、挨拶に楽屋を訪問して話をしたのであるが、ナイはト音記号で書かれた楽譜に対応できるとのこと。今回は聴けなかった民俗曲もそうだが、日本の各地の民謡もあの音色で是非聴いて見たいものだ。
参考サイト
野崎ユミカ オフィシャルサイト http://www.music.ne.jp/~szin/nozaki/
Gheorghe Zamfir http://www.gheorghezamfir.ro/
Labels: ブカレストの日常
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