ルーマニア 晴れ時々曇り

ルーマニア・ブカレストに暮らす小生の備忘録。 連絡は、次のアドレスまで。迷惑メール以外は歓迎します。 Bucurestian(at)gmail.com

Tuesday, October 24, 2006

秋の陽だまり

Parcul Izovor


どういうことだろうか、先だって秋がほぼ終わったようなことを綴ったのだが、晴天の下、本日ブカレストの日中の気温は22度であった。Tシャツ一枚という装いも多く、大学広場近辺では、へそだしルックの女学生たちを久し振りに目にした。スーツを着用していた小生は、汗ばむ陽気にネクタイを緩めて涼を求めることが唯一の抵抗だ。

先週末に出掛けたモルドヴァ共和国ワインフェスティヴァルの会場であった議会広場のすぐそばのお客を訪ねたあと、次のアポイントメント先までの小一時間を徒歩で移動することにした。直線距離では2km程度であるが、國民の館の北側に広がる緑一面のイズヴォル公園を斜めに移動したお陰で地図上は殆どロスのない道程となった。

緑一面といえども、その緑は芝生のようで実は芝生で無いようにも思える。日本のそれのように丈は短くはなく、そこに踏み込むと履物が隠れるくらいである。舗装された歩行者用の通路もあるのだが、それは、ほんの一部であり、四角い敷地のところどころに自然的かつ人工的に形成された道があった。緑の中にそれは一縷の土の色を見せる。つまりは、けものみちと同じ理由でつくられたものだ。ただ、面白いことに、それらはほぼ平坦で唯一の障害物に成り得る樹木のないルート上においてまっすぐに伸びていない。臨終が近いの患者の脳波の幅と例えようか。他の言葉で表現してみると、野球における走者は塁間の直線から3フィートの幅の走塁を認められているので、それ以上に幅があるといえば良いだろうか。野球の塁間27.431mに対して、本日歩いたけものみちは200mくらいであるから、この例えも良いもので無いかもしれない。いずれにせよ賢明な読者諸氏には頭で描いてくれた様に思う。
長い前置きになったが、何故、この条件でまっすぐなけものみちを先人は歩まなかったのか、という疑問が小生に起こったというだけのことだ。

公園を北西角で後にすると、目の前には運河に架かる小さな橋である。信号待ちをしていると、車のクラクションが複数回鳴る。この國では、特にブカレストにおいては習慣とも言うべきものである。信号が青になって1秒いや一瞬のうちに前で信号待ちをしている車が動かい、もしくは右折左折がままならない時は、即クラクションを鳴らすのである。それも長い間鳴らし続けるのである。この行為は運転者が老若男女問わずに行なわれる。小生が民度が低いと考える行為の一つだ。信号待ちの歩行者には、耳が痛いほどの音量である。

公園を一歩あとにすると天気も気温も同じなのに、この時期においては非現実的とも言える心休まる秋の陽だまりの余韻を掻き消されてしまった。文字通りに。

次の週末もこの気候であれば、是非愛読書『坂の上の雲』を持って出掛けよう。秋が終わるというのに今年は読書の秋を楽しんでいない。

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Monday, October 23, 2006

ビストリツァ旅行 Bistriţa, Romania

ビストリツァ旧市街へ続く道
奥に福音教会の塔が見える


ルーマニアの中北西部を占めるトランシルヴァニアに地方にBistriţa-Năsăud県がある。その県庁所在地がBistriţaである。一方でナサウドNăsăudという街もあるのだから、ナサウド市民には不満もあることだろう。県庁所在地としては比較的小さなドイツの影響を受けたというこの古都は、「ドラキュラ」という固有名詞のお陰でかろうじてその名が知られている。ドラキュラのモデルと言われるヴラド・ツェペシュ(Vlad Ţepeş)公の生家があるシギショアラほど、その名は決して轟いてはない。小説家ブラム・ストーカー(Bram Stoker)の著作『吸血鬼ドラキュラ』の冒頭に登場することにおいてにのみ名が残ったというべきであろう。

ドラキュラといえば、ルーマニアについて外國人がイメージするキーワードの上位に位置されるくらい有名でな言葉である。ストーカーの著作を読んだ人は、そんなに多くないと思われるが、映画化されたせいであろう、「日光を嫌い夜に活動する」「美女の鮮血を好む」「十字架とニンニクを嫌う」という奇抜な設定も合わせて有名になっている。因に、小生のドラキュラの思い出はというと幼児時代に見た藤子不二雄A原作のテレビアニメ「怪物くん」に登場したトマトジュースとを好むドラキュラと名乗る怪物だ。同年齢でも学生時代の友人だと鞭を手にして進むゲームソフトであろう。このように極東日本においてもこの程度にその名は知られているドラキュラである。

Bistriţaについては、13世紀以前の文献が見つかっていないのであるが、1241年から2年間のわたり西をめざすモンゴルの勢力によって制圧された経験からか、同じく東からの大勢力オスマン・トルコに備えて1465年より城塞都市として機能し始める。中央広場にある福音教会(Biserica Evanghelică)の塔は1470年から1564年に掛けて建築されているので、丁度この城塞都市の黎明期の建築物である。因に75m高さの塔はこの小さな街のシンボルとして知られている。今となっては、ルーマニア一地方の県庁所在都市といえども閑散とした街であり、観光客が目を向けるほど魅力があるとは思えない。併しながら、この中央広場とその周辺は、広々として且つのんびりとしていた。散策というよりも散歩に適している。

福音協会の塔


今回の旅行も日本からのお客様をお連れしての訪問であったが、丁度この日は秋の終わりとも言うべき日であったらしく、気温が著しく下がったとのこと。日中の最高気温が5度とは、実際の気温か天気予報からの情報かはいざ知らず地元の方が教えてくれた。道理で寒いはずである。お客様にはコートのご持参を薦めていたこともあり、体調への不具合は起こらなかったのが幸いである。
Bucharestより北方に位置するせいか、はたまた山間部の谷間に位置するせいか、紅葉は進んでおり、落葉も始まって結構な時間が経っているように見受けられた。マロニエの並木道を歩くと大きな枯れた葉がかさかさと風に呼応して季節を感じさせる。セーヌ河畔のマロニエも良いが、ビストリツァのマロニエの下を歩くのも良いものだ。マロニエの実も沢山転がっているのだが、これらは栗に似て非なるもの、つまり栃の実である。一般には食用にならない。栗ごはんを懐かしく思った。

地元のお客様から招待された夕食は、ストーカーが宿泊したというホテル「Coroana de Aur」のレストランでお世話になったが、栗ごはんは当然メニューには記載されておらず、ここぞとばかりに、ニンニク料理とトマトジュースを注文したが、誰も気付いてくれなかった。

参考サイト
Bistriţa Online http://www.bn.ro/bol/index.htm
Hotel Coroana de Aur http://www.hotel-coroana-de-aur.ro
怪物くん(テレビ朝日)http://www.tv-asahi-channel.com/anime/18.html
悪魔城ドラキュラシリーズ総合サイト http://www.konami.jp/gs/game/dracula/

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Saturday, October 21, 2006

Festivalul Vinulul din Republica Moldova

メインステージ
「國民の館」こと議会宮殿の正面に位置


ブカレストには有名歴史的建築物は意外と少ない。取り分け外國人観光客が見物するものといえば、更にその数は少なくなる。小生が思うに、それらは凱旋門とルーマニアン・アテネウムそして国民の館の3つに要約できる。ガイドブックに必ず掲載される國民の館は、独裁者と呼ばれた当時の大統領ニコラエ・チャウセスクの命で建築された未完の大建築物である。外見からは余り想像のつかない内部は豪華絢爛な空間であり、大理石の床や階段や巨大なシャンデリア等を含め一見の価値がある。ここで2月に開催された舞踏会に招待された時は、普段の見学コースで見せられるのとは全く違った異空間を感じたものだった。因にこの國民の館は、その内外を問わず全てをルーマニア産の材料で賄っているというのは驚きに値する。

現在は國会が開催されることからか、議会宮殿と呼ばれることが多いとは、知人のルーマニア人の言葉である。それゆえに、國民の館の正面にある広場を議会広場(Piaţa constituţei)と名付けられているのであろう。國民の館から真東に4km伸びる統一大通り(Bulevardul Uniri)の拠点つまり西の端に位置するこの議会広場は、普段は駐車場として利用されているようだが、しばしばフェスティヴァルと称されるイヴェントが行われる。そしてこの週末に開催されたのは「第2回モルドヴァ共和國ワインフェスティヴァル」。最近はブカレストでも目にすることもある、隣國モルドヴァ共和國産のワインをテーマにしたフェスティヴァルである。モルドヴァ共和國といえば、かつてはソ連邦の構成國でもあり、それ以前はルーマニアの一地方であった國である。極めてルーマニアに近い國といえるが、来年元旦に欧州連合に加盟が決定したルーマニアとは発展の面で大差がある。目立った産業もなく誰が言ったか「欧州の最貧國」との不名誉な言葉を何度か耳にしたこともある。その中でのワイン産業は重要な輸出品目なのであるが、上お得意様であるロシアが今年になってから全面輸入禁止を通告した。旧CISの構成国でもあるモルドヴァ共和國は、同様な立場のグルジアと並び広大な旧ソ連邦のワインセラーの役目を果たしていたのだが、現状は政治的理由からこの両國は締め出しを受けている。この辺のことをこの会場で関係者に尋ねると、皆「一時的なものだから、問題ない」と回答するではないか。真相はいざ知らず、この辺の楽観的なところが、ルーマニア人気質に通じるものがあると思った。

本日が初日でいささかの人ごみを予想していたのだが、夕方にも関わらず会場は閑散としており、上の写真のように、メインステージでは歌手が民謡を歌っているにも関わらず気の毒なくらい立ち止まって聴いていく人はいない。

出店ブースから國民の館を臨む


会場は、広場を囲むように周りをモルドヴァ共和國ワイン各社や食べ物を売るテントや屋台等の出店ブースが並んでいる。15℃程度の気温のせいか、当初の意気込み程に小生の試飲は進まなかったが、試飲したおよそ10銘柄のワインやブランデーは、すべて期待に応えるものであった。全社の全ての銘柄の試飲は当然叶わなかったが、試飲と共に小生が興味を持っていた小売販売も行われており、設定価格が手頃ということもあり、フルボトルサイズ3種の3本を購入した。安価と珍しさから、まとめて100本ほど購入したいのだが、保管スペースと運搬を考えるとその本数は現実的ではない。併し20本くらいなら大丈夫だろう。このイヴェントは明日も行われるのでもう一度出掛けることにしよう。試飲できない1本150ユーロのコニャックはさぞかし美味であろうと思いつつ会場を後にした。

余談ではあるが、日本で特に若い人にモルドヴァ共和國についての印象を訊くと、オゾン(O-zone)というポップスグループがまず思い浮かばれるようだ。4年前にルーマニアでも流行した彼らの活躍がなければ、未だモルドヴァ共和國は余り知られない國であったろう。

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Friday, October 20, 2006

2006-07 UEFAチャンピオンズリーグ 5(グループリーグE 第3節)

観戦チケット使用前
グループリーグ3戦のチケットは透かし入りである


直前の週末からブカレストは秋が急に深まったかのような寒さに見舞われた。その一週間前から既に陽の無い時間は10℃前後だったので部屋の温水暖房を使用していたが、日中にもその温かさに頼らなければならない時期になったのだ。冬は間もなく来るのだろう。
こんな気候の中、サッカー観戦に出掛けた。キックオフは前回同様21:45。盛り上がる試合前のスタジアムの熱気だけでは暖は取れない。今夜のステアウア・ブクレシュティの相手はレアル・マドリーである。銀河系軍団との異名を取るスペインリーグの名門で日本でも知られたクラブある。私見では、この夜の相手を前節のオリンピック・リヨンよりは低評価をしていた。その理由はレアル・マドリーが第1節でオリンピック・リヨンに2-0で敗退したというだけの理由ではない。両者とも強豪には間違いがないのだが、組織力という点でフランスチャンピンが勝っていると考えているからだ。その分スキが出来ると考えたのだ。
小粒なプレイヤー揃いのステアウア・ブクレシュティは、組織力で100%の力を出さなければ、ヨーロッパの強豪とは渡り合えない。相手のミスに乗じることは初めから期待するものではないし、強豪ほどミスを犯さないものだ。つまり、こちらがミスをすると致命傷になる。ノーミスで互角に近づくことが出来て、相手のミスに乗じるのが勝利への必須条件と思える。消極的ではあるが、これが、ステアウア・ブクレシュティのサポーターの一般的な声である。

寒いスタジアムでは、先制点を許したステアウア・ブクレシュィのせいで、急激に寒くなった。その後もゴールを許し、ますますスタジアムは冷える。時間的にも真夜中に近づくのでその相乗効果もあるのだろう。
ステアウア・ブクレシュティが1点を返した時は一時的に湧いた。確かに少し温かくなった。併し、その時点でスコアは1-3。64分(後半19分)ということを考えると、運を味方につけてようやく引き分けかと思われたが、その12分後に4点目のゴールを献上すると、それまで以上に冬の訪れを感じたのである。

熱狂的なステリストが好むゴール裏席
冬の装いだ


ところで、幼少から阪神タイガースのファンである小生は、昨今のタイガースの活躍を嬉しく思う。同時に暗黒時代とも言われる低迷期の際も応援して続けていたせいか、贔屓のチームの成績に対しての我慢強さも身についている。昨今の読売巨人軍の低迷でファン離れが深刻な問題にされているとの報道を悲しく思う。成績が芳しくない時こそ、声援を送るべきであろう。その点、寒さが増すばかりのスタジアムであったが、満員のサポーター達はチャンスの度に立ち上がり盛り上がり、ミスの度に大声で怒鳴る。散発的に熱を発する姿を近くで見ていると、甲子園球場の阪神ファンを思い出した。

銀河系軍団の有名選手、デイヴィット・ベッカムとロナウドが、それぞれ71分、78分に途中出場したのは、恐らくサーヴィスであろう。このグループリーグの各試合の入場料は3試合とも異なる。小生の持つ向こう正面の席で200RON、100RON、50RONとなる。対レアル・マドリーからディナモ・キエフまで半額ずつの値下げである。因にこの2選手は、殆ど活躍していなかった。試合の大勢が決まったあとの出場且つサーヴィスであるからかと、小生は邪推している。

サッカーも野球もそうであるが、スポーツはミスやエラーというものが試合の流れを左右し、結果にまで作用することもしばしばだ。大差のついている試合ならば、それに頼る可能性は限りなく小さいが、それをも信じて待つファンというのは、やはりいるものだ。森羅万象が「信じるものは....」の言葉の通りになるとは考えないが、次節も信じてみよう。
ステアウア・ブクレシュティの次節は再びレアル・マドリーとの対戦。11月1日に敵地サンチャゴ・ベルナベウでのアウエー戦である。温水暖房の効いた部屋で冷えたビールと一緒にテレビ観戦になるだろう。温水暖房に頼らずに済むような熱くなれる試合を期待したい。それは勿論、酔いだけに頼らずである。そうなるとガス代も助かる。

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